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ヤヌス・スクルスキ作の重巡“高雄”の(網尺:11000)模型

右手の指と対比すると、いかに細密なつくりであるかが分かろう。
かたちで陳列されている大型客船の模型群である。“クイーン・メリー”を始めとする有名客船が鮒を競っている光景はまさに壮観というほかない。
イギリスでもう一つ忘れ難い思い出は、昭和52年にヴィッカーズ社のバロー・イン・ファーネス造船所を訪ねた折、そのオフィスで見た巡洋戦艦“金剛”の大型模型である。この時の訪問の目的は、艤装中の空母インヴィンシブル”と連続建造中のスウィフトシュア級原潜を見せてもらうことだったが、取材を終えてから立寄ったオフィスで、かねて話に聞いていたこの模型をじっくりと見る機会に恵まれたのである。
日本海軍が外国に発注した最後の主力艦である“金剛”は大正2年に竣工しているが、この模型はその建造時に作られたもので、縮尺48分の1であるから、全長は4メートル半に近い大きなもので、しかも装備品は細部にいたるまで実にていねいに作られていた。バロー・イン・ファーネス造船所は“金剛”のほかにも“三笠”、“香取”の日本戦艦を建造しており、日本海軍とは深い縁があるが、それにしても第2次大戦時に敵国となった日本軍艦の模型を立派に保存して今日に至っていることには改めて敬意を覚える。これが日本だったら、敵国の軍艦模型を麗々しく飾っておくなどもってのほかだと、早々に撤去されてしまったであろう。バローの街にはミカサ・ストリートと名付けられた街路もあり、この街の人造られたことに今なお誇りを抱いている。その根底には何よりも国家の枠を超えた船そのものに対するなみなみならぬ愛着が根付いているからである。

 

オーストリアのウィーンにある軍事史博物館にも精巧な模型が数多く展示されているが、その中で一際目を引くのは第1次大戦で戦没したド級戦艦“フィリブス・ウニティス”の大型縦断面模型である。よくも細かく作ったものだと感心させられる出来栄えで、無数の区画の一つ一つを丹念に見ていったら、いくら時間があっても足りないほどである。本艦の戦績は決して名誉あるものではなかったが、この模型は30.5センチ3連装砲塔4基を装備した典型的なド級戦艦の構造を如実に示す逸品といってよい。かつてのオーストリア・ハンガリー帝国が有力な海軍を持った国であったことも、いまではもう昔話になってしまった。

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富岡幸雄さん製作のフランス客船“ノルマンディ”のぺ一パーモデル

 

 

 

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